ヤマト醤油味噌 店長が仏蘭西・リヨンでクネル
シェフの祭典「ボキューズ・ドール」
リヨンでは2年に一回「ボキューズ・ドール」って言うプロの料理人のコンテストが開催されます。各国で編成されたプロの料理人を集めた「ナショナルチーム」がこのコンテストに参加しており、国の威信を賭けた、若手シェフの登竜門でもあるんです。ヨーロッパ中の主だったシェフがこの期間中に、リヨンに一堂に会するというなかなかあり得ないチャンスなのですよ!
で、このコンテストの開催に合わせて、食材供給業者や食品メーカーも展示会を同じ会場でやって、各社が自分の自慢の商材を集まったシェフたちが集まってくる!!当然キラ星のごとき三ツ星レストランのシェフ達を筆頭に、多くのシェフが星を持っていて、さらにこれから星を取るであろう若きシェフたちも。
ヤマト醤油味噌が取引をしているフランスの販売店も、この展示会に自分のブースを持つので、私は毎度そのお手伝いに行きます。2007年くらいから参加しているから、もう6回くらいは行っているか…。当初は何がどうなっているのか、右も左もわからず、まあ、フランス人はしゃべる喋る。
朝7時にホテルを出て、8時に会場について、準備をして、9時過ぎには準備OKで、10時開場の前の小一時間の間に、会場内の他のブース出展社の商品を見て歩いたりするのが唯一の息抜きでした。その後は、英語しか話せないから、まあ大体2パターンの会話を延々とする。いやもう、相手はいつも変わる(別の人なんだ)けれど、私が説明する商品は決まったアイテムなので、喋る内容はほぼ同じなんです・・・・だから、これけっこうエネルギーを使うんですわ!
終わらない一日
で、そんな感じで夕方5時まで展示会を真面目にやった後に、始まるのは、「パーティタイム!」
というか、このディストリビューターは悪賢いというか、まあ人間心理に長けていると言えば良いか、事前にワインとシャンパンを1パレット用意してある!1パレットですよ!で、この展示会場内で5時過ぎると、シェフを呼んでいつの間にか飲みはじめるわけです。
本当は会場内でパーティは禁止されています。が、ここでは、(意図が有って)持ち込んだお酒を無料で振舞います。
そうすると、シェフが友達のシェフを呼んで三々五々集まって来ますよね?
他のブースの人は、もう展示物に布を掛けて帰ってしまう中で、ここのブースにだけはいつも人だかりがしているわけです。人が集まるところって、魅力的ですよねえ!だから、人が人を呼んで、いつの間にか、まあ、大変な盛況になるわけです。
想像できます?
もう、ここのブースだけシェフが一杯・・・・・
で、おもむろに、はじまるわけです・・・・
「この商品知ってる?〇〇シェフは使っているよ!君、まだ使ったことが無いのか?」といつの間にか商談になっているわけです。
ですから、お仕事は5時に終わるわけでは無くて、延々と7時か8時まで続く・・・・
飲んで、喋って、喋って、呑んで、またジョークで返して、そうしたら横からまた別の人が会話に入って来て、また挨拶のキスからはじまって、呑んで、喋って、喋って、呑んで、・・・
ようやく散会、移動して、9時過ぎにレストランに入ってチームの皆で食事をして、終わってホテルに帰るとほぼ真夜中の0時です。でまた翌朝は同じルーティンです。
喋って飲んで、呑んで喋って、喋って飲んで、まあ、最初の3日間はなんとか元気を保っているのですが、もう4日目になると、エネルギーが切れて、「あー、早く日本に帰りたい・・・お茶漬け食べたい!!!」って素直に体が拒否反応を起こしているのですわぁ。
何をあんなにしゃべることがあるんだろう、信じられないわぁ、って感じです。
ひがむ、すねる=くねるです。判っていただけるかしらん、この文化の違いによる辛さを・・・
5日目は最終日です。もうパーティは有りません(笑)
心底嬉しい!
片付けが終わって、また皆で打ち上げパーティタイム!
ここで、初めてリヨンの郷土料理のお店に連れて行ってもらいました。
「名物だから、是非、これを喰え!」って言われて出てきた料理名は「クネル」
食べたら・・・?これ懐かしい味、食べたことの有る味です。
『お魚のすり身』です、リヨンでの名物は石川県の『スギヨ』さんの味そっくり!ちなみに、スギヨさんは私が子供の時から食べている魚のすり身の製造メーカーで、石川県の顔でもある食品会社さんで、親しみが有り、スギヨと呼ばせて頂きます。
でも、もっとびっくりして嬉しかったのは、付け合わせに「ごはん」が出て来た!!!「やったー!ご飯だ~」って頃には、まわりのチームメンバーも、眠くて寝てるやつも何人か居て、それを見て、僕もほっとした・・・・「あー、あんなに元気に振舞っていたこいつらも、やっぱり同じ人間か、気丈に振舞っていたけれど、無理してたんだなあ」って感慨深く、チームとしての連帯感はより一層深まった夜でした。
リヨンで、くねったお話しでした。
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店長:山本晴一
地元の酒造会社で修業を積んだのちに家業の「株式会社ヤマト醤油味噌」に入社。
修業時代の吟醸酒づくりにヒントを得た生の醤油「ひしほ醤油」を日本で初めて完成させた。
以来、フランスの三ツ星レストランをはじめ欧米の百貨店からも引き合いを受ける。
その後現在にいたるまで“あたらしい伝統食”を数々生み出している。
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